フェリックス・ヘルナンデス投手の完全試合を祝うファンたちと熱気帯びる球場。 写真 = 佐々木 志峰
イチロー選手のトレード移籍の衝撃後、チームは勝ち越しを見せている。26日現在8連勝後、3連敗。その前にも7連勝、5連敗など波が激しいが、チームは徐々に勝ち星を増やしている。
得点力に期待できないなか、最小失点で試合を作る投手力が鍵となり、チームとして形を作っている。なかでもエースのフェリックス・ヘルナンデスが圧巻だ。15日の対タンパベイ・レイズ戦では、フェリックス・ヘルナンデス投手が史上23人目の完全試合を達成、21日のジャパンナイトでも貫禄の投球を見せた。
27日現在、27試合に登板して、3点失点以上は8試合のみ。2010年のサイ・ヤング賞投手へのチームメイトからの信頼は厚く、まさに大黒柱だ。
メジャーリーグが始まって以来、いまだに23人しか成し遂げていない完全試合は今シーズン、フェルナンデス投手を含め3人の選手が達成した。完全試合の対戦チームは、4月21日のマリナーズ、6月13日のヒューストン・アストロズ、そしてレイズと、いずれもリーグで打撃成績が著しく思わしくない球団。だが、1年に3人の達成者という数字投高打低の傾向も見てとれ、投手力が今後のチーム上昇の指針ともいえる。
マリナーズは6月8日のドジャース戦で6人の継投によるノーヒットノーランも達成しており、投手陣の奮闘は高く評価できる。
止まないスター選手放出大黒柱の未来は?
投手陣の活躍も虚しく、地区最下位を「指定席」としてきたマリナーズ。2010年に5年間の契約延長をしたへルナンデス投手だが、2015年以降も球団としては引き留めを図りたいところだ。
マリナーズには、これまでも数々のリーグを代表するスター選手が所属してきた。だが絶頂期を迎える折に、彼ら看板選手の他球団への流出を防げずにいる。
1989年から98年の間に在籍したランディ・ジョンソン投手はアストロズ、89年から99年まで所属したケン・グリフィー・ジュニア選手はシンシナティ・レッズ、94年から2000年まで所属したアレックス・ロドリゲス選手は同地区のテキサス・レンジャーズ。
そして今季は、絶頂期の活躍は色褪せたが、常に存在感を放ってきたイチロー選手が移籍した。圧倒的な存在感を持つヘルナンデス投手を放出することになれば、これまでの歴史は繰り返される。
イチロー選手がヤンキース移籍時の記者会見で「一番負けているチームから、一番勝っているチーム」へ移る興奮を語ったように、選手も個人成績がチーム成績に反映されることを望んでいるに違いない。
後半戦が始まってからチームは好調。26日現在、25勝16敗と勝ち星が先行、イチロー選手移籍後も19勝12敗と若手主体のチームの歯車がかみ合い始めている。残り30数試合の勝ち負けで劇的なシーズンを迎える可能性もあるかもしれない。
負けが込み、スター選手放出に至る悪循環を抜け出し、現在の波と雰囲気を維持。そしてチームとして安定した力を新しいマリナーズに期待したい。